スタートページ> (主張・講演、 Web教材) 歴史> コンピュータの歴史> パソコンの歴史、 OSの歴史
ここでは、パソコン初期を除き、Windows、しかも個人向けのWindowsに限定しています。
汎用コンピュータOS、UNIXやLinuxは、それぞれ別章で取り扱っています。なお、OS全体の歴史概要は「OSの歴史」にあります。スマートフォンのOSに関しては「スマートフォンの歴史」にあります。
青色:マイクロソフト、 赤色:アップル、 茶色:その他([ ]は社名)
1973年 CP/M[Digital Research]最初のパソコン用OS
1977年 Apple-DOS
1980年 86-DOS[Seattle Computer Products]:CP/Mを参考にi8080用に開発
1981年 PC-DOS 1.0 :マイクロソフトが86-DOSをIBM用にカスタマイズ
MS-DOS 1.0:PC-DOSをマイクロソフト版として発表
Star[Xerox]:最初のGUI採用パソコン
1983年 Lisa OS:最初のGUI環境
1984年 Macintosh System 1
1985年 Windows 1.0
AMIGA OS[Commodore]
1986年 漢字Talk1.0 GS System Software
1987年 OS/2 1.0[IBM]:Microsoft社と共同開発
1988年 GS System Software 4.0:16bitOS
1989年 NeXT STEP 1.0[NeXT Computer」:UNIX互換
1990年 DOS/V[IBM]:OSで日本語に対応
1991年 System 7:32bitOS
1992年 Windows 3.1
1993年 Windows NT:32bitOS
1994年 EPOC32[Symbian、現Nokia]:その後Symbian OSと改称されスマートフォンOSの主流に
1995年 Windows 95
Be-OS[Be]
1996年 Windows NT 4.0:パソコンサーバ用としてUNIXに対抗
1996年 Windows CE 1.0:最初のハンドヘルドOS
1997年 MacOS 8.0
1998年 Windows 98
1998年 Windows Mobile:スマートフォン用OS。
当初はPalm PC、PocketPCといわれたが2003年からこの名称に
2000年 Windows 2000
Windows Me
2001年 Windows XP:64bitOS
MacOS X:UNIXベース
2006年 Windows Vista
2008年 iPhone OS:スマートフォン用OS、後にiOSとしてiPad用にも
Android[Google」:スマートフォン用OS
2009年 Windows 7
2010年 iOS 4:iPhone/iPad用OS
2012年 Windows 8
2015年 Windows 10
1972年に、インテルは8ビットのマイクロプロセッサi8080を開発した。デジタルリサーチのゲイリー・キルドール(Gary Kildall)は、i8080用の高級言語を開発していたが、1974年、そのためのOS、CP/M(Control Program for Microcomputer)を開発した。これが最初のパソコン用OSだといわれる(汎用コンピュータやミニコンのOSは既に確立していたが、それをパソコンで使うには大規模すぎた)。
CP/Mは、当初はインテルに納入するはずだったが採用されなかったため、自ら販売することにしたのだという。i8080は、1974年にその改良版i8080A(MSC-80)が最初のパソコンといわれるMITSのAltair8800に採用された。当時は、半導体著作権が未整備だったため、TIやAMD、NEC・東芝・三菱など大企業が類似製品を開発し、多くのパソコンに搭載した。それに伴い、CP/Mも広く用いられるようになった。
1974年、モトローラは8ビットのマイクロプロセッサMC6800を開発した。その技術者らがモステクノロジーに移り、1975年にMOS6502を開発した。このチップはアップルのApple-IIに採用され注目を集めた。Apple II のためのOSがApple-DOSである。これがパソコンでDOSという名称がつけられた最初だといわれる。
1978年にSCP(Seattle Computer Products) は16ビットのi8086を組み込んだコンピュータ・キットを販売したが、そのころのCP/Mは16ビットに対応していなかった。それで、SCPのティム・パターソン(Tim Patterson)は、1980年に86-DOS(x86用のDOSの意味)を開発した。CP/Mを参考にしたのだが、既に使われなくなった機能を大幅に削除し、ミニコンで使われていたUNIXのアイデアを取りこむなど、かなりCP/Mとは異なるものになっていた。86-DOSはあまり普及しなかったが、MS-DOSのベースになったOSとして知られている。
DOS(Disk Operating System)とは、OSがCPU内部に組み込まれているのではなく、磁気ディスクに置かれていることから名付けられたのだが、現在では当然なので、あえて「D」OSとはいわない。この意味では、CP/MもDOSである。
むしろ、現在のパソコンOSがアイコンやマウスによるGUI環境を前提にしているのに対して、当時のOSではキーボードから命令文(コマンド)を入力しなくてはならなかった。そのような「古い時代の」OSをDOSということが多い。
1980年当時、CP/MとDOSがパソコンOSの主導権争いをしていた。むしろCP/Mのほうが評価が高く多数派であった。それが結果としてDOSに軍配があがったのは、当時のコンピュータ業界の巨人であったIBMが、自社のパソコンIBM-PCにDOSを採用したからである。
マイクロソフトは、SCPから86-DOSの権利を買い取り、パターソンを引き抜いて改造した。それをIBMにライセンスしたのがIBMのPC-DOS 1.0である。この契約では、マイクロソフトがIBM以外にも販売できる内容だったので、それをMS-DOSとして商品化して成功した(関連:「パソコンの歴史 BASICとビル・ゲイツ」)。
また、IBM-PCの改良版PC/ATは、多くのパソコンメーカーがそのクローンを開発し、AT互換機といわれ、むしろその互換機仕様のほうが業界標準になってしまった。それらのパソコンは、こぞってMS-DOSを採用するようになり、MS-DOSも業界標準になった。これがマイクロソフトが巨人になる礎である。
なぜ、IBMがCP/Mのデジタルリサーチではなくマイクロソフトを選んだのか、IBMが独占的な契約にしなかったのかに関しては面白い逸話がある(諸説あり真相は不明だが)。その一説。
9x系:MS-DOSを基にしたWindows95とその後継OS
NT系:サーバ向けに開発されたWindows NT用OSの後継OS。XPからはProfessional版として上級個人用にもなる。
現在のパソコンは、アイコンやマウスで操作できるGUI環境になっている。ところがMS-DOSでは、コマンドをキーボードから入力できるだけであった。Windows 1.0は、マイクロソフトが最初に開発したGUI環境OS(それでWindows シリーズとなる)である。
GUIはゼロックスのStar(1981年)で採用され、アップルのLisa(1983年)ではそのためのOSが提供されていた。しかも、Lisaでは現在と同様に画面の移動などができるのに、Windows 1.0では、MS-DOSから WIN.COM と入力してWindowsが起動し、画面もタイル状に並べてあるだけで、画面の重ね合わせなどはできなかった。当時のマイクロソフトOSは、かなり遅れていたといえる。
WindowsがGUI OSらしくなったのは、1990年のWindows 3.0からである。未だにMS-DOSからの起動であるが、ヒューマンインタフェースが改善された。GUI環境の管理やGUI部品の提供をするGDI(Graphic Device Interface)が整備され、GUIアプリケーションの開発が容易になった。
それまでパソコンで日本語を用いるのには、日本語表示用のハードウェアが必要であり、各社が独自の方式を採用していたため、データの互換性がなかった。日本IBMが1990年に発表したDOS/Vは、日本語表示をソフトウェアのみで実現した。1991年にマイクロソフト(日本)は、IBMの提供を受けて「MS-DOS 5.0/V」を発表した。
日本で大きな影響を与えたWindowsは、1993年のWindows 3.1である。インタフェースの改善やマルチメディア機能の強化などがなされた。当時、国民機といわれたNECのPC-9800に搭載された。
DOS/Vは、Windows 3.0にも搭載されたが、 Windows 3.1 に MS-DOS 5.0/V を組み込んだ方式が一般化するにおよび、NEC以外の国産各社はDOS/Vに移行した(NECは独自路線を続けるが、1997年にDOS/V搭載機種を発表、2003年にすべてDOS/Vへと移行)。
このWindows 95により、パソコン利用層が急激に増加し、「パソコン=Windows 95」のような状況になった。それにより、各メーカーは独自のハードウェアを訴求する意味が少なくなった。パソコン業界に大きな影響を与えたのである。
以降、1998年にWindows 98、2000年にWindows Meが開発された。両者とも機能強化、性能向上が図られたが、本質的な変化はなく、Windows 95 のマイナーチェンジであり、後続のWindow XP への橋渡し的存在だといえる。なお、MeではブートにもDOSを使わなくなった。
Windows NT は、ビジネス用としてサーバや重要なクライアントを対象に開発された。IBMとの共同開発によるOS/2をベースにして、マイクロソフトが独自に作り直したOSである。ビジネス用として、機能の豊富さよりも堅牢性を重視している。XPにより統合されるまで、一般用のWindows(9x系という)とは、連携しつつも、異なるシリーズ(NT系という)として発展する。
Windows CE は、PDA、スマートフォン、組み込みソフトウェアなどに利用される軽量のWindowsである。多様な派生OSが存在する。
Windows XPは、Windows 95以降大規模な変更のあったOSで、9x系とNT系を統合する位置づけになる。このOSのカーネルはNT系(NT 2000)を引き継いでいるので、NT系が9x系を取りこんだいうのが適切かもしれない。反面、GUI環境は(極端に変わったが)9x系をベースにしている。
2000年頃になると、9x系ユーザも堅牢性を重視するようになり、NT系ユーザもWebアプリケーションが多くなり、9x系と同様な機能を求めるようになった。また、パソコンの性能は格段に向上して、両者を統合した「重い」OSに耐えるようになってきた。反面、OSの価格が高いとの批判が高まり、ユーザの利用目的や成熟度による機能選択が求められるので、9x系ユーザ向けのHome Edition、NT系ユーザ向けのProfessional Editionに区分した。32ビットOSであるが、Professionalの一部では64ビット版も提供された。
Windows Vistaには、含まれるソフトや価格から次のエディションがある。
・Home Basic:一般ユーザ向け下位エディション
・Home Premium:一般ユーザ向け上位エディション
・Business:ビジネス向け下位エディション
・Enterprise:ビジネス向け上位エディション
・Ultimate:専門家向け最上位エディション。全機能を含み32ビット版と64ビット版を同梱
このように、Windows Vistaは新概念や新機能が多く取り込まれたOSであるが、反面、高いパソコン性能が必要なこと、以前のハードウェアやソフトウェアが使えないものがあったこと、ユーザから見た新機能が中途半端だったことなどから、「あまり人気のない」OSであった。そのため、Vistaを経由せずに、XPから直接にWindows 7へ移行するユーザが多かった。
Windows 7はWindows Vistaで不評だった原因を排除したOSで、Vistaの後継OSの位置づけになるが、実際にはVistaを経由せずに、XPから直接に7へ移行するユーザが多い。
エディションはVistaと同様、Home Premium、Professional、Enterprise、Ultimateに区分されているが、Vistaとは異なり、上位エディションは下位の全機能を備える上位互換ができるようになっている。実際には、最上位のUltimateだけが提供され、機能のオン・オフはプロダクトキーでコントロールする仕組みになっている。
以前のOSとの互換も考慮されている。7を購入したのだが、当分はVistaあるいはXPで用いたい場合は、それらにダウングレードができる。Professional以上のエディションでは XP Mode があり、7とXPを共存させて切り替えて利用することができる。このような対処により、XPで用いていたハードウェアやソフトウェアをそのまま使うことができるので、7への移行を円滑に行うことができる。
Vistaより軽くなった。Vistaまでは、OSに多様な機能を追加してきたため、OSが肥大化して重くなってきた。Vistaへの不満の一つに、パソコンを買い替える必要があった。7では、一部の機能をオンラインサービスに任せて、OS機能を絞ることにより軽くした(「Windows Live おすすめパック」などのサービスもある)。後期のXPで用いていたパソコンならば7でも使える(Aeroの透明化をオフにするなどの妥協が必要な場合もある)。
参照:マイクロソフト「Windows 7 ホーム」
http://www.microsoft.com/japan/windows/windows-7/
Windows 8の特徴は、ユーザインタフェースの一新にある。スマートフォンやタブレットPCのようにディスプレイをタッチして操作する環境(Modern UI)を標準インタフェースにした。
これは、Microsoftが、今後のPC環境はタブレット型が基本だと認識したことを示しており、OSだけでなく、パソコン全体に与える影響が多いくなると考えられる。
Windows 8の特徴
Windows 8の普及推進要因
Windows 8の普及阻害要因
このような理由により、Windows 8の普及速度はWindows 7のときと比較して遅かった。2015年に Window10 が発表され、主流となる以前にWindow10へと移行してしまった。
参照:笠原一輝「Windows 8で何が変わったのか? 初心者の疑問をひも解く」
http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1302/15/news017.html
柳谷智宣「Windows 8の疑問が全解決 Q&A50連発!」
http://ascii.jp/elem/000/000/740/740421/
Windows 10の位置づけ
Windows 10の発表は、次の2点で、Windows史上画期的な出来事だった。なお、発表から一定期間は、Windows 7とWindows 8からのアップグレードは無償で行われた。
Windows 10の特徴
Windows 8でのユーザインタフェース、Microsoft アカウント、Windowsストアなどの特徴は、ほとんど継続・強化された。そのなかで、評判の悪かったスタート画面が修正され、Windows 8のような全画面タイプのスタートメニューに変わって、Windows 7以前のメニュー形式を組み合わせた画面になった。
Windows 10で新規に取り入れられた特徴、注目されるようになった機能を列挙する。